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2004年07月30日

スチームボーイ  〜彼の優曇華〜

スチームボーイ スターターキット誰かが首を長くして待っているものというのがこの世には存在します。このスチームボーイもそんな作品のひとつではないでしょうか。ファンにとっては9年という歳月はあまりに長すぎるだろうと思います。大友克洋の新作が『STEAM BOY』という題名で19世紀のイギリスを舞台にした蒸気ムンムンの作品である、ということを私は前もって知っていたので、そのスチームで何を隠してくれるのだろう、どんだけ隠してくれるのだろうと楽しみにして見に行きました。9年間も隠し続けていたのですから隠し切るだろうと。

しかし私は大きな勘違いをしていました。スチームとは蒸気なのです、煙ではありません。蒸気は煙のようにその場にとどまっていてはくれず(まあ煙もずっとそばに居てくれるというわけではありませんが、蒸気よりは根気があります。)、はぁーっという間に消えてそれは水になってしまいます。確かにスチームボーイのほとんどすべてのシーンは蒸気で満たされていましたがそのスチームはすぐに消えてしまい、蒸気機関の歯車の噛んでいる様子やジェームス・レイ・スチムの表情までが露になり、見えない部分のほうが少ないのではないかと思うほどです。なぜか蒸気で物を隠して欲しいという立場で見ていた私はそのうち『スチームボーイ』の中に何か隠せるいいものはないかと探し始めました。何か楽しみにしていたものを見つけた、手に入れたときの(それほど楽しみにしていたというわけではありませんが)特有の喪失感、絶望感からある種の義務感まで生まれていたのかもしれません。そして見つけたのです、スチーム城を。



映画の中盤の時点で蒸気機関の塊であるその巨大な城が映画の最後には壊れることは見ている誰もが知っていたことです。そうかあのスチーム城が爆発し、崩れ落ちるときには今までとは比べ物にならない量の蒸気が発生し、ついには何も見えなくなるのか、と私は思い込んだのです。私は待ちました、何も見えなくなるその時を。そしてついにその瞬間はやってきたのです。しかしその予想は見事に裏切られ、何も見えなくなるどころかそこには大きな大きな花が咲いたのです。そのときになって私はようやく事態を把握したのです。彼にとってこの作品は優曇華のようなものなのだと。この花は見る人すべてに幸運を運んでくれる花です。しかし彼にとっては不幸の花となり得るかもしれません。何せ優曇華の花は3000年に一度しか咲かない奇跡の花なのですから。そうですよね、29億円もかかっている花なんて早々頻繁に咲いてしまっては困るというものです。この計算だとわれわれや彼が生きている間にはもう優曇華の花は拝めないということになります、つまりこの映画は彼の遺作であると。そうして考えてみるとあの優曇華もさらに感慨深いというものです。大友克洋は9年間もの長きに渡り、『スチームボーイ』を隠していたのではなく、この大きな花をこっそり栽培していたのです。なるほど製作スタジオがスタジオ4℃からサンライズに移ったのも納得がいくというものです。花を育てるのには4度では寒すぎますし、やはり植物には日光が必要ですからね。



スチームボーイ公式ホームページ
[amazon][DVD] スチームボーイ スターターキット



[2004日本/東宝][監督][脚本]大友克洋[脚本]村井さだゆき[音楽]スティーブ・ジャブロンスキー[声]鈴木杏/小西真奈美/津嘉山正種/中村嘉葎雄/児玉清/沢村一樹/斉藤暁

posted by KINEMAtograph Writers at 01:50| Comment(5) | TrackBack(1) | Kinema | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なぜ9年もかかってしまったか。映画館に置いてあったスチームボーイ新聞によると、大友監督がやりたい映像作りのためにデジタル制作のシステム作りからやっていたから、だそうです。
その辺は見事に結実していて、自由にアニメーションできている感じがし、大友監督の映像センスに脱帽するほかありません。ラストにばかでかいのがでてきて壊れるという、めちゃくちゃで力わざな終わらせ方も、らしくていい。きっとみんなもそれが見たかったんだ。
科学の功罪が対立するようなテーマに対して、それを単純に解決させる筋書きを用意する代わりに、その対立のエネルギーがそのまま一方的に増大して、対立のまま爆発崩壊して終わり!!そしてその映像的なうまみに涙が流れそうになりました。
でも流れないよ。ポカーンとしてそこまではよかったけれども、それ以上はありませんでした。まだ描き切れていないのではないか。特に人物にもっとクローズアップしてもよかったのではないか。ひとりひとりのキャラクターの葛藤がいまいち伝わらず、誰のこともよくわからないままにスチーム城が壊れてしまった感じです。
大友監督は何となく人物描写がへたくそなイメージがありましたが、ガラス張りの建物が破壊されスカーレットがショックを受けるシークエンスなどは、秀逸でした。9年あれば、もっとまとめられたのではないかと思い、この散漫さに無念です。
これが遺作になっちゃうのはホントにやだなあ。
Posted by マサキ杏平 at 2004年07月30日 14:15
あれ、ソース間違ったかな。スチームボーイ新聞(スチームタイムズ)には書いてないや。どこで読んだんだっけ?
Posted by マサキ杏平 at 2004年07月30日 14:29
そうですね。次はもっと早く新作が見たいです。
また9年かかったら僕、もう30ですからね。二十代のうちには
拝みたいものです。そう考えると宮崎駿のエネルギーっていう
のはやっぱりすごいんだなと思ってしまいます。もうハウルで
すからね。ひとつの作品を9年かけて作る労力も相当なものだ
と思いますけど。
Posted by 常岡 at 2004年07月30日 15:54
TBさせて頂いた「Blog.arcstyle」の杯と言います。なんか失敗してしまいTBが2つもなってしまい申し訳ないです。できれば1つ消して頂ければ幸いです。お手数ですが、よろしくお願いします。
Posted by 杯裕二 at 2004年08月01日 01:42
作業完了です。
Posted by マサキ杏平 at 2004年08月01日 11:23
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Excerpt: 大友作品のスチームボーイを見てきました。上映時間は126分なんですが、時間以上の感じがする濃い映画だったと思います。muroさんは微妙とおっしゃってますが、自分としては結構面白かったです。 ビッグ・ベ...
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Tracked: 2004-08-01 01:37