犬の映画は映画館で見るべきです。「見る」べきだというと語弊があるかもしれません。クイールは盲導犬の話なので、映画の中では目の見えない人がクローズアップされています。盲人の方もこの映画を見たいかもしれません。それならばやはり映画館で体験するべきです。
わたしは新宿松竹会館でクイールを見ました。日曜日の昼間の回、198席がすべて埋まりました。おばさんとこどもでぎっしりです。みんな犬好きです。飼っている犬を預けてきている人、これから飼いたい人、そのうち飼いたいと思っている人かもしれません。確証はありませんが、きっとそうです。
映画館全体にあたたかい眼差しが溢れています。犬が好きな人にとって犬の映画は、犬がそこに映っているだけでいいのです。もしくは犬の息づかいがあればそれでいいのです。それだけで犬好きはカンタンに自分の犬体験と重ね合わせることができ、自然に笑い、自然に泣くことができます。
『さよなら、クロ』という映画は、犬の話である前に妻夫木クンの話であったと思います。肝心の犬があまり映っていないことは致命的です。その点クイールはいい映画でした。クイールがあれをした、クイールがこれをした、ということが並べられているだけです。犬映画が人間の話に脱線してしまえば、それは他のたくさんの人間映画の山の中に埋もれてしまうだけであって、犬好きを満足させることはできません。崔監督は辛抱強く犬の動きを追ったと思います。
かく言うわたしはそれほど犬好きではありません。しかし犬好き未満犬嫌い以上の人にこそ、映画館でクイールを体験してもらいたいと思います。みんなが心を許していて、犬が少し動くだけで場がどよめきます。ライブ感とでもいいましょうか。そしてわたしも犬好きに混ざって、犬好きの共感に飲み込まれるようにして、大いに笑い、大いに泣きました。妻夫木クン好きの中にいてこの現象が起こることはまずありません。
クイールホームページ
さよなら、クロ...ホームページ
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[2003日本/松竹]
[監督]崔洋一[原作]秋元良平/石黒謙吾[脚本]丸山昇一/中村義洋[撮影]藤澤順一[出演]小林薫/椎名桔平/香川照之/戸田恵子/寺島しのぶ/黒谷友香/名取裕子


